東根で、「梅ケ枝清水(めがすず)」と呼ばれるわき水と由緒ある旧家をそのまま生かした田舎料理屋がオープンした。この家に住む横尾千代乃さん(67)が、地元の新たな魅力になればと一念発起。観光客向けに蔵座敷や庭を開放し、長年温めてきた夢を実現させた。
横尾さんの家は蔵や庭園のある伝統的な旧家。かつて第18代東根城主の弟、広台が居を構えたが、タカの巣を取ろうとして命を落とした広台の後を追い、奥方の梅ケ枝(うめがえ)姫が敷地の泉に身を投げた悲話が伝わる。湧水(ゆうすい)は姫の名にちなみ「梅ケ枝清水」と名付けられた。地元で「めがすず」と親しみを込めて呼ばれる観光名所で、今もこんこんと水がわいている。
そんなロマンと歴史ある家を生かせないか―。横尾さんは、樹齢1500年の大ケヤキや旧家、寺院が多く残る城下町の風情を生かした地域おこし構想に賛同し、仲間と話し合いを重ねながら、自宅の開放と郷土料理店の開店を夢見てきた。ともに夢の実現を目指した夫に先立たれ、当初計画からは遅れたが、ようやく開店にこぎつけた。
調理場などを直したほかはほとんど旧家そのままの蔵座敷。漆塗りの膳(ぜん)や風格ある絵皿など、旧家ならではの品々も豊富にある。仲間に有限会社役員として名を連ねてもらい、地元料理店主の手ほどきを受けながら、近所の主婦らと開店準備を進めてきた。
メーンの郷土料理は、当面昼だけ予約制で出す、蔵座敷でのくるみおこわの定食。日中は居間で、ふらりと立ち寄る観光客向けにくるみもちと茶を振る舞う。庭の湧水で養殖しているヤマメの塩焼きや山菜など、化学調味料を一切排した自然素材そのままの田舎料理で、遠来の客をもてなそうと張り切っている。
開店セレモニーを兼ねた10日夕、土田正剛市長ら来賓約30人を迎え宴席を設けた。横尾さんは「ばあちゃんの手料理です。やっとオープンできました。ゆっくり楽しんでってくださいね」と笑顔であいさつ。忙しく調理場と行き来して精力的に切り盛りする横尾さんに、「この雰囲気も味もいいね」「知り合いに自信持って紹介しますよ」と席のあちこちで称賛の声が上がっていた。
「田舎料理 梅ケ枝清水」は東の杜資料館の北約100メートル。営業は午前10時から午後5時までで年中無休。昼定食の予約は電話0237(42)0589か、ホームページhttp://www.megasuzu.com
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